【野球】いくら批判されても「巨人・中田翔」は“ノープロブレム”の理由 [あかみ★]

あかみ ★

　無期限出場停止処分を受けていながらも、いくら新天地とはいえ、たったの10日で事実上の“処分解除”となり、のうのうと試合に出場できるなんて、どう考えても理不尽極まりない――。中田本人だけでなく、この電撃移籍をまとめた日本ハム、そして巨人へ怒りをぶちまける人たちの声を集約すると、大体このようなものであろう。

■　多くの批判があっても「柳に風」の巨人

　確かにその通りだと思う。しかし、残念なことにルール上では何も問題はない。無期限出場停止処分を下したのは、あくまでも前所属の日本ハムだ。その日本ハム側から中田の無償トレードを打診されて了承した巨人にとっては“何の関係もない効力”である。ネット上では中田を獲得し、何事もなかったかのようにすぐさま戦力として出場させている巨人に対して「道義に反する」「厚顔無恥にも程がある」などと主張する書き込みも未だに散見されるが、これらの叫びも悲しいかな当事者側に突き刺さるようなことは全くないだろう。

　中田が新天地で初ホーマーを記録した22日のDeNA戦では試合が行われた東京ドームに長嶋茂雄終身名誉監督が姿を見せている。この日、長嶋氏は試合前に中田を激励。そのミスターとの対面に加え中田については移籍後に医療従事者へ300万円を寄付したことも、巨人側から発表されている。さらには移籍後初本塁打を記録した中田の公式記念グッズまで発売することも球団側から公式サイト上で26日に発表された。

　これらの動きにも「中田の移籍を美談に仕立て上げようとしている」「グッズ販売で商売まで始めるなんて何事か」などと案の定ハレーションが起きているが、巨人側は“柳に風”とばかりにスルーして開き直ってしまえば別に痛くも痒くもない。

　巨人側の観点からすれば中田は日本ハムから“タダでいいから何とか獲得してくれないか”と頭を下げて頼まれたから今月末のトレード期限ギリギリで受け入れたのであり、もしこれに“移籍後もそのまま無期限出場停止処分としてほしい”という無茶な付帯条件があったとするならば聞く耳すら持っていなかったに決まっている。獲得すれば批判必至の中田に対し、「こちらはそのリスクも覚悟で再起のチャンスは与えてやるから、その代わりに首位をひた走る阪神タイガースを蹴落とすための戦力、そしてグッズ収入などグラウンド外でも馬車馬のように働いてほしい」とビジネスライクに考えるのは当然と言えば当然だ。

　中田の移籍に関してはプロ野球を統括する日本野球機構（NPB）や他の10球団からは実行委員会等の公式会議の場で問題提起すらされていないのが現状である。繰り返すが、何もルールに抵触していない以上、現時点で球界有識者や有力OBらが「おかしい」と勇気ある抗議を口にしていても結局は堂々巡りのまま終わってしまうのがオチだ。

■　どちらかと言えば日ハムの対応に問題

　ルールの盲点をつく形で強行された感のある中田の移籍だが、問題視するのなら、巨人よりも日本ハムの対応だろう。

　中田に対して新天地で心機一転を図る筋道を立てたのであれば、移籍先の巨人ではなく、まず日本ハムで会見を開き、そこに栗山英樹監督、球団幹部も同席した上で本人の口から「反省」と「謝罪」、「経緯説明」を行わせるべきだった。それでも納得できない人は残るだろうが、中田がここまで日本ハムで自身を応援してくれていたファンにケジメを付ける意味でも筋を通しておけば今のようなレベルの批判殺到は起こらなかったような気もする。実際の取材過程においても日本ハムの複数の関係者や同球団の有力OBから、これとほぼ同じような見解を耳にした。

　とはいえ、かねてから日本ハムはドラスティックな対応を貫く球団だ。そもそも、そのような考えはハナからなく極端な表現をすれば“厄介者はさっさと出て行ってくれ”というスタンスだったのであろう。

　このままでは、中田本人の日本ハムファンに対するケジメだけでなく、中田を中心としたチーム作りを行ってきた栗山監督、そして球団フロントの管理責任も一切問われずに曖昧なまま蓋を閉じられてしまうことになる。これでいいのかという疑問は拭えないが、こちらもこのまま「ジ・エンド」で押し切ってしまうつもりなのだろう。

　何より中田から暴力行為を受けた側の被害選手も「大事にしてほしくない」と球団側に申し出ていることもあり、形式上“示談”が成立している背景もある。そもそも暴力行為のイザコザがあった当事者同士が和解しているのは事実として動かしようがなく、ここで特に権限を持たない第三者が四の五の文句をつけても生憎ながら如何ともし難い。

8/28(土) 11:01配信
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66703