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🦍「エネオス!エネオスエネオス!トーキョー2020のチケット当てよう!🦍」

1 :風吹けば名無し:2020/03/19(Thu) 16:23:08 ID:bZiTADd50.net
CM流すのやめたらもう?

2 :調べてみたらMAZDAでした ◆oOo7CibUdY :2020/03/19(Thu) 16:23:46 ID:iB6SURmO0.net
 蟷螂がとても好きだった。数百のレンズから成る目。獲物を逃がさぬ鎌。飽きぬ食欲。
 夏、草むらへ入っていく。長い虫取り網とふたつの虫かごを持って、探検するように雑草を掻き分ける。狙いが定まらぬまま、ただ力いっぱい振って、網の中に入る蟲を眺める。一匹一匹鑑定する。
 これは殿様バッタ、蟷螂じゃない。
 これはギンヤンマ、蟷螂じゃない。
 要らない虫をつかんで投げた。投げた勢いで羽がもげ、取れやすい後ろ足が落ちた。飛べなくなったギンヤンマと跳べなくなった殿様バッタがどうなったのか、俺は知らない。
 ただ俺は蟷螂が捕まえたかっただけなのだ。
 日が高く上り、髪の毛が汗で濡れたころ、ようやく大蟷螂を捕まえた。茶色のフォルム。二つの鎌。十六センチを超える大迫力。
 こいつはカッコいい、飼おう。虫かごに入れて、餌と葉っぱを入れて育てよう。
 俺は満足し、蟷螂を虫かごに入れた。
 家に帰ると勉強机の上で蟷螂を離した。
 蟷螂は暴れず、じっとしている。ときより触覚を上下上下と動かし、なにかを探っている。蟷螂は徘徊して獲物を探さない。じっと待つ。
 蟷螂の捕食シーンが見たくて、餌のコウロギを与えてみた。しかしすぐに食いつくことはなかった。食物連鎖の下位にいるコウロギがぴょんと跳ねる。
 机からいなくなり、いつの間にか部屋からもいなくなる。
 いまになって、虫かごの中に蟷螂とコウロギを入れておけばよかったのだと思う。密閉された空間ならば、逃げる心配も、忘れたころに干からびたコウロギの死骸を机の下から見ることもなかった。
 ただその時は、直で餌を食べる蟷螂が見たかった。虫かごの透明なプラスチックさえ鬱陶しかった。出来ることなら自分の目玉をくり抜いて、脳みその中で見たいぐらいだ。
 消えたコウロギの代わりに、新しいコウロギを取り出した。今度は跳べないように一番後ろの足を二本とも千切った。
 短い四本の足でノロノロと歩くコウロギ。離乳食を作る母親になった気分だ。食べやすいでしょ、と蟷螂に話しかけた。
 蟷螂が餌に狙いを決めた。鎌を深く畳み、触覚がコウロギに向けられる。
 二つの大鎌の射程圏内に入った。
 鋭利な棘たちが一瞬だけブレる。
 いつの間にか、蟷螂はコウロギを捕らえていた。
 ジタバタと抵抗する食料に、蟷螂は喰いつかない。
 一、二分経ったところで、疲れたコウロギはまだ生きているのに動かなくなる。蟷螂はそのタイミングで喰らいついた。
 俺の一番好きな時間が始まる。
 彼ら捕食者は、必ず対象の首から食べる。それも後ろから。どんな形で捕まえようと、鎌をうまく動かして、首裏から食べる。
 どこから食べれば一番効率がいいのか知っている。歴史のDNAが教えてくれているのだ。
 生まれたての蟷螂も同じように食べる。共食いをする時でさえ、首から食べる。
 俺はこの瞬間が一番好きだ。自分の知らないことを蟷螂が知っているような気がして、好きだ。スリッパでつよく潰せば死ぬような生き物が、俺に今歴史と命を教えてくれている。
 蟷螂がコウロギを食らい尽くし、鎌に付いているブラシでキレイキレイしているのを見届けてから、虫かごに入れた。
 同じタイミングで、母親の声が家に響いた。今日の夜はカレーだと。俺はわくわくしてリビングへ向かった。
 勉強机の上には、コウロギの足が二本、残った。

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