サンリオのポエム

1 ：風吹けば名無し：2019/01/10(木) 00:23:47.00 ID:FFOV8kTW0.net

下半身に残る水蒸気が生臭い。飴色に濡れた衣服を姉に剥ぎ取られて、後悔と恥が痛みと寒さを上書きした。もう何度目だ。キキはひたすら裸の猫になって目を擦り続けた。
プラズマに汚された服を星間ガスで拭いながら、ララは密かに匂いを楽しんでいた。あくまで世話焼きを演じつつ。少年の麝香、人間が浴びればたちまち蒸発する。星同士だからできる娯楽。
「魔法の雲で綺麗にしてあげるから、もう泣かないの」
一糸まとわぬ弟に囁き、何も着せぬまま雲の毛布に包む。そのまま抱いて互いに横たわると、乳臭い感触がほとんど直に伝わってくる。
キキは知らない。ララの無意識から湧く歪んだ魔法が、彼に幾度も洪水の夢を見せていることを。

2 ：風吹けば名無し：2019/01/10(木) 00:24:15.91 ID:FFOV8kTW0.net

「今度プリンくんともお昼寝したいな」
彼女は何の気もなしに口走る。彼女にとっては何もかもが夢に過ぎない。
だが。
その熟れた唇から漏れた戯言は、なかまたちとただ純朴に過ごしてきたゴールデンレトリーバーにとっては
あまりにも未知で、蠱惑的すぎた。
メロディの昼は、プリンにとっては今までのどの夜よりも艶めかしかったのである。

3 ：風吹けば名無し：2019/01/10(木) 00:24:31.99 ID:FFOV8kTW0.net

黄金の雨とともに、星雲から壊れた月の半分が落ちてきた。もしも行き先が地球であったならばたちまち光の海と化しただろう。
もう半分のララが降臨するまで、キキは墜落の苦痛ではなく喪失感に満たされていた。彼女からくちづけを頂いて、ようやく夢から覚めて泣いた。

4 ：風吹けば名無し：2019/01/10(木) 00:24:57.88 ID:FFOV8kTW0.net

寝ているキキの顔を見ていたらね……。うふっ……。寝言で『おかわり〜☆』なんて言ってたの。おいしい夢を見ているのかしら……？
わたしはあなたの顔がおいしそう。唇が寂しいから人差し指を噛むけれど、どうしても夢に入れないのよ。月のしずくの眠り薬がないといつまでも起きてしまうわ。
ねえ知っているかしら？　わたしがキキにホットケーキを焼いてあげる時、キキが甘くなってくれるかどうかずっと考えているの。
この間も雲でキキを作ってみたわ。左腕をもぎ取って頬張ってみたけれど、駄目ね。霧の味しかしないの。綿菓子になるはずなのに。わたしたち、雲で何でも作れるはずなのに。
今回はもっとおいしくなってもらうために……指をもう少し強くかじって、わたし自身のAB型の流れ星を混ぜて作ってみたのよ。それでも駄目なの。キキはわたしのはずなのに。やっぱり少し違うのかしら。違うからおなかがすくのよね。鏡を見たって吸い付きたくはならないもの。
ねえ次は、いいえ次の次くらいは少しだけ、髪の毛だけでもいいからちょうだい。キキさえいればキキを傷つけないでキキをもうひとり作れるの。あなたを真っ青なベリーのタルトにしてしまっても、お日様が昇る時にはいつものわたしたちなのよ……。
一緒においしい夢を見ましょう？

5 ：風吹けば名無し：2019/01/10(木) 00:25:15.79 ID:FFOV8kTW0.net

窓辺にヒヤシンスを置いておこう。　ぼくとララのお花が咲くのが楽しみだ。ララ色に咲くんだよ。
何色かって？　見れば分かるじゃないか。薔薇色や百合色と同じだよ。
それぞれの花の色はいつだって違うはずなのに、確かに薔薇で、百合なんだ。
ヒヤシンス……ヒュアキントスはとても綺麗な男の子だった。アポロンを、太陽の神様を愛していたんだよ。
愛が美しすぎて死んでしまったんだって。お互いに太陽だったら悲しまずに済んだのにね。
限られた命の、なんてかよわくて、いとおしいことだろう。ぼくとララは双子の太陽だよ。だから大丈夫。

6 ：風吹けば名無し：2019/01/10(木) 00:25:35.41 ID:FFOV8kTW0.net

冬に安らぎを与えてくれるカプチーノにはいつだってシナモンが付き物です。
まずはシナモンスティックの鮮やかな香りを楽しみましょう、決してかじってはいけません。
舐めるのもご法度ですよ、なんて下品な！　ただし、周りに人がいなければひそかに試してみましょう。
香りがお好みでしたら、ミルクの泡立つカプチーノにシナモンをそっと挿入れてみます。
乱暴になさってはいけません。ゆっくりと、ぬるぬると、互いの芳香がほどよく交わる程度に。
スティックにカプチーノが染みわたり、カプチーノ自身からシナモンの香味がほのかに伝わる位がちょうど良いでしょう。
お好みの程度に交わった後、スティックを抜いてもよいですが、シナモンをより深く味わいたければ挿入れたままでも構いません。
冷めないうちにカプチーノを口に含みましょう。濃厚な泡、滑らかに溢れるミルクをも舐め取り終わった時、嗅覚だけでなく舌の奥にもシナモンを感じられるはずです。
さらに、カプチーノの底から湧き出るエスプレッソの愛すべき苦み、そこから派生する芳醇さ。
いつもはすました顔のエスプレッソも、シナモンと混ざってカプチーノと一体になってしまえばなんと艶めかしいことでしょう。
もはや淫靡とすら形容できるこの生温い液体を、さあどうぞご賞味ください。あなたの体温も徐々に増していくはずですよ。

7 ：風吹けば名無し：2019/01/10(木) 00:25:55.84 ID:FFOV8kTW0.net

キキさん。ララさん。存在してくれてありがとうございます。
あなたたちに年という概念は必要ありません。ただある、あり続けるだけで充分なのです。
銀河に瞬く命として、どうか幸福の中でいつまでも生きてください。
そしてその幸福の薔薇雲を、ほんの少しずつ、世界の苦しい人々に分けていただけますか。
願うこどもたちのための流れ星として。枯れ果てた涙の後にかかる虹として。
いいえ、特別に何かをなさる必要はございません。ただふたりで在ってください。
あなたたちは幸福を与えられます、既にくださっています。存在そのものが希望なのです。
おめでとうございます。ありがとうございます。
何十・何百・何万・何億……いくつでも恒星の蝋燭を立てて、青天を煌きで飾り付けてくださいませ。
いつまでもいつまでも、わたしが滅びたずっと後までも、あなたたち自身が夢でありつづけますように。
おめでとうございます。アーメン

8 ：風吹けば名無し：2019/01/10(木) 00:26:17.56 ID:FFOV8kTW0.net

キキ、地球のみんなにお祝いをしてあげましょう？　このひとつまみのお星様たちを飛ばしてあげるの。
いいアイデアだねララ、ぼくたち自身へのご褒美にもなるよ。ほら、もうすぐじゃないか。
……24日ね。わたしたちは何歳、何千歳、何十万歳になるのかしら？　いつまでも子供なの、それとも？
ぼくたちはいつだって何歳にもなれるんだよ。ほら、両手いっぱいのお星様。ふたご座からたくさん羽ばたかせてあげようね。
ねえ、地球の占いではふたご座じゃないのよわたしたち、不思議な話ね。恋人のための日に産まれたの。
占いはあくまで幸福を祈るための尺度だよ。ぼくたちはぼくたちさ……カストルとポルックスよりずっと近い。
あの子たちはゼウスに祈ったのよね。
そうさ、「死と不死の壁を解いてでも、命のきらめきが天に昇る瞬間を共にしたい」って。それよりもさらに近いんだよ、ぼくたちは。
いつでも手を繋げるものね、いつでも口づけして、いつでも肌を。ねえキキ、あなたはわたしと何を共にしたいかしら？
ララ、耳を貸して。かわいい子供たちに聞かせるにはまだ早いから。
……あら、もう少し夜が更けてからにしましょう？　きれいなままの子がプレゼントをお願いする夜に……キキに一番の……

9 ：風吹けば名無し：2019/01/10(木) 00:26:38.09 ID:e0dR3hWY0.net

ここからが本当の夢芝居だ

Fin

10 ：風吹けば名無し：2019/01/10(木) 00:26:43.66 ID:FFOV8kTW0.net

今日はいい夫婦の日☆　ぼくたちのお父さま星とお母さま星も自慢の夫婦だと思うんだ。憧れちゃうな〜。
ねえ憧れるよねララ？　ぼくたちやっぱり夫婦になっちゃえばいいんだよ。ずっと一緒なんだから元々結婚してるのと同じじゃないか。
ぼく気づいたんだぁ。恋とか結婚とか色々考えたけど、おいしいお料理を作ってくれてどこにでも旅してくれて、結局一番およめさんなのはララだったんだよ。
チルチルとミチルは一番近くに青い鳥を見つけたんだよ。チルチルとミチルはきょうだいなんだよ。
イザナギとイザナミは日本って国を一緒に産んだんだって。すごいね。イザナギとイザナミも一緒に産まれたんだよ。
ララなら知ってるはずだよね、いつもおとぎ話してるんだから。ぼくたちおとぎ話の存在だから、神様みたいなものだから何しても許されるはずだよ。
夫婦っていいなぁ。ところでさ、地球にはぼくたちで結婚届を作る人がいるんだよ。すっごく夢にあふれてるよね！　ずっと一緒だもん！
ララ……おねえちゃん……
あっ、かぼちゃスープできたの？　がんばってこぼさないように食べるね、ララの作った大事な大事なお料理だから。不器用でごめんね……

11 ：風吹けば名無し：2019/01/10(木) 00:27:34.23 ID:FFOV8kTW0.net

https://twitter.com/melody_mariland/status/598699279117471745
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