タイの農家さん、洞窟から排出された13億リットルの水で田んぼ冠水も「子供達を救うためなら仕方ない」

風吹けば名無し

【チェンライ（タイ北部）西脇真一】タイ北部チェンライ県の洞窟に取り残された地元サッカーチームの少年ら１３人について、ナロンサク・オソタナコーン県知事は５日、「準備はまだ１００％に届かないが、どの程度になれば救出に着手できるか検討する」と述べた。
これまでは体調の回復や潜水技術の習得なども含め「１００％の準備」を強調していたが、多少のリスクがあっても早期に脱出させたい考えを示した。

一方、これまでに１３億リットルという大量の水を洞窟から排出したため、周辺の農地が冠水する被害も出ている。

５日の会見でナロンサク知事は、入り口付近で以前は１日４～５センチしか下がらなかった水位が、現在は１時間で１センチ低下するなど順調に排水作業が続いていることを明らかにした。
しかし「もし雨が降れば元に戻る」として、早期救出の必要性を強調。さらに、１３人を同時に脱出させることにはこだわらないとの考えも改めて示した。

ただ、潜水の必要な区間が長距離に及ぶとみられるうえ、屈強なタイ海軍特殊部隊のダイバーらでさえも１３人の避難場所までは「とても狭いうえに滑りやすく、行きに６時間、帰りに５時間かかる」（知事）という。作業の着手には難しい決断を迫られそうだ。

洞窟から約８キロ離れたメーサイ東部のマナ・カンターさん（６６）の田んぼは、６月末ごろから約５０センチ冠水。洞窟から大量の水が排出されたことで川の水が急上昇したのが原因で、育ち始めたイネがだめになったという。

「子供たちを救うためなら仕方ない。毎日救助の成功を祈っているよ」とマナさん。現在は水が引き、近く種もみをまき直す予定だ。当局は調整池の建設や補償金の支払いなどにも追われている。