東京駅で無差別☆☆を行います。日時は西暦12018年5月11日

風吹けば名無し

「ここが、東京駅か…」

名前も分からない植物に飲み込まれぱらぱらと砕けたアスファルトの欠片が散らばる道の先
形を保つことに疲れ果て、膝を下したと思えばそのまま二度と起き上がることのない人工物
赤いレンガと白い柱だけが、その存在の識別要因だ
周りには数多の大木が聳え立ち、森林と化したその場所は、確かに1万年前までは生命の活気と電磁気力の飛び交う文明進化の象徴だったのだ

「1870μSh/h」

正常な数字ではない。いくら対放射線障害のゲノム編集を施された「受精卵」とはいえ長時間の滞在は危険だ

「『ラディエーター』の巣が近いな…」

あの日、空から落ちてきた石
蓋を開けられることを期待していたかのようだった
人類はそれに答えてしまった
その日、食物連鎖の図が書き換えられた

彼らは強靭ではあったが幸いにも低知能であった
数少ない生き残りが、隙を見て彼らの嫌う極地へ逃げ込むことはもはや宿命であったのだろう
カコン
金属と岩石のまぐわる音が聞こえる

「気付かれたな」

武器を取り出し交戦体制を整える
生存が最優先の極地生活では、俺のような天性希少の荒い「受精卵」のフラストレーションは貯まるばかりだ
ラディエーターの無差別殺傷は、俺に与えられた唯一の気分転換だ

「良いよ、来いよ！」

「ドガぁッ！」