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なろう主人公「俺がいなけりゃもっとひどいことになってた!誰も助かりゃしなかった!俺のおかげだ!」

1 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:24:41.23 ID:sMipS0Qzp.net
 否定された。打ち砕かれた。幻想は、粉々に崩れ落ちていく。
 肩が重くなり、全身に見えないなにかが覆いかぶさり、猛烈な吐き気がスバルを襲う。視界がぐるりと回り、濁り淀んだ感情が胸の中で渦を巻き――、

 エミリアは、なにも言わなくても全てわかってくれると思っていた。
 エミリアは、スバルの痛みも悲しみも、同じように感じてくれると信じていた。
 エミリアは、スバルの思いもなにもかも汲み取り、受け入れてくれると願っていた。

 ――それはあまりにも、儚く、傲慢で、独りよがりな押しつけだった。

「俺の……」

 否定された。否定されてしまった。
 こうしてこの世界に落ちてきて、信じて、寄る辺してきたはずのそれに。

 命を振り絞って、痛みにも歯を食い縛って耐えて、悲しみも涙を拭いながら乗り越えて、それもこれも全て、思い描いてきた偶像を守り続けるためだったのに。
 その、ありもしなかった身勝手な理想郷が、音を立てて崩れるのがわかって、

「これまで、全部……」

 唇が震える。目の奥が熱い。舌が痙攣し、心臓の鼓動がうるさいほど激しい。
 顔を上げる。エミリアと目が合う。紫紺の瞳が、悲しみだけたたえて見ている。その瞳に映る自分の顔が、あまりに惨めで、救われなかったから。

「――俺のおかげで、どうにかなってきただろ!?」

 金切り声で、控室を揺るがすような怒声を、張り上げていた。

「徽章が盗られた盗品蔵でだって! クソ危ねぇ殺人鬼から助けた! 体張った! 全部、君が大事だったからだ!!」

 シーツを掴む指先がわななき、爪の食い込む掌に血がにじみ始める。
 叫ぶ声は所々が裏返り、聞き苦しさに拍車をかけて響き渡った。

「屋敷でのことだってそうだ! あちこち齧られて、必死だった! 頭割られて、首吹っ飛ばされて、それでも村のみんなを助けたじゃねぇか! レムだって、ラムだって、きっと一番いい形になったはずだ! 俺が、俺がいたからだろ!?」

2 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:24:59.52 ID:HcjZ+zp0p.net
>>1
やめたれw

3 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:25:11.90 ID:tAzWrV110.net
なろう作品(700万部)

4 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:25:14.68 ID:sMipS0Qzp.net
 自分の活躍を列挙する。
 思い描ける限りの、自分の功績を羅列し、遠のきかける彼女の影を追い求める。

「俺がいなけりゃもっとひどいことになってた! 誰も助かりゃしなかった! 誰も誰も誰も! 全部全部全部! みんな俺が! 俺がいたからだ!」

 盗品蔵で、エミリアは終わっていたはずだ。フェルトも、ロム爺もそうだ。
 それを乗り越えても屋敷で、レムが死に、村人が死に絶え、あるいは呪いは屋敷に残るロズワールやベアトリス、ラムにすら矛先を向けたかもしれない。当然、そこにもエミリアの命を脅威にさらす可能性はあった。

 それらを全て、排除してきたのは自分の功績だ。
 誇るべき、報いられるべき、ナツキ・スバルの行動の結果だ。

 これだけのことをしてきたのだから、こうまで尽くしてきたのだから、

「お前は俺に、返し切れないだけの借りがあるはずだ――!!」

 自分の行動の根源となっていたはずの思いまで裏切って、叫びが出た。

 報われることのなかった気持ちが、賞賛を求める虚栄心が、満たされることを望む渇望が、愛されることを願う利己心が、混迷の極みにあるスバルをそう導いた。

 そしてそれは、互いにとって、決定的な一言だった。


「そう、よね」

 ぽつりと、震える声が、額に汗を浮かせて息を荒げるスバルにかけられた。
 その響きは納得であり、諦観であり、決意であり、つまりは、終わりだった。

「私はスバルに、すごい、いっぱい、たくさんの、借りがある」

「ああ、そうだよ。だから俺は……」

「だからそれを全部返して、終わりにしましょう」

5 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:25:29.33 .net
スバル死ね

6 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:25:51.35 ID:d1WBZCPy0.net
よっこらフォックスどうぞ

7 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:26:00.26 ID:sMipS0Qzp.net
 はっきりと、告げられた言葉にスバルは跳ねるように顔を上げた。
 そして、こちらを見つめるエミリアの瞳に、空虚だけが広がっているのを見て、自身の発言を省みて、スバルは自分が取り返しのつかないことを言ったことに気付いた。

 勢いに任せて、感情に奔流に押し流されて、言ってはならないことを言った。
 自分の、もっとも純粋な、その感情の根源たる思いまで踏みにじって、子どもの癇癪じみた怒りで全てを台無しにした。

 自分と彼女の関係を、『貸し借り』で結ばれる関係だとしてしまえばそれは、

「違う……違う、違う違う違う、そんなことが言いたかったわけじゃ……」

 『貸し借り』の天秤が釣り合ってしまえば、そこでおしまいの関係ということだ。
 なにかをしてあげたいと、無償の思いを切っ掛けにしていたはずの行いに、打算を持ち込んでしまえばそうならざるを得ない。

「もう、いいよ。――ナツキ・スバル」

 親しげに、初めて出会ったときから、ファーストネームで彼女はスバルを呼んでいた。
 その彼女がスバルをフルネームで呼んだとき、スバルはもうどうしようもないのだと遅すぎる理解を得た。

 うなだれるスバルに、エミリアは手を差し伸べることをしない。
 彼女は振り切るように銀髪を揺らしてこちらに背を向けると、

「あとでレムがくるから、あの子に従って。王都に残ってからのことは全部、あの子にちゃんと任せておくから」

 返事をすることができない。そして、それを求められてもいない。
 歩き出すエミリアが遠ざかる。その背に指を伸ばすどころか、その背を見送る勇気すら今のスバルにはわいてこない。

8 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:26:02.40 ID:SID5g7MD0.net
本当のことしか言ってない定期

9 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:26:38.42 ID:+LMOnevA0.net
なお身内の仕業の模様

10 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:26:43.59 ID:sMipS0Qzp.net
 物理的に遠ざかる距離。そして、それ以上に遠ざかった心の距離がある。

「私、ね……」

 ふと、扉に手をかけたエミリアの足が止まり、そんな呟きが室内に落ちた。
 彼女はスバルに語り聞かせるというより、自分に聞かせるようにささやかな声で、

「期待、してたの。ひょっとしたらスバルは私を……スバルだけは私を特別扱いしないんじゃないかって。他の、普通の人と同じように、普通の女の子と同じように、区別しないで見てくれるんじゃないかって……」

 王選の広間で、公平な扱いを求めた彼女だ。
 ハーフエルフである事実は、そんなささやかなことすら願い事にするほど、彼女に苦痛の時間を強いてきたのだろう。
 だが、

「そんなの、無理だ」

 ぽつりと、スバルもまた小さく呟きで応じる。
 エミリアのひとりごとは、スバルに答えを求めるような響きではなかった。だからスバルの呟きも、彼女の言葉に対する答えの体でなく、自分に聞かせるためのものだ。
 彼女の口にした言葉を反芻し、スバルは弱々しく、力なく首を横に振り、

「たとえ世界中の全ての人間を引っ張り出してきたとしても、できない。エミリアを……君だけは、他の人間と同じ目で見ることなんて、できっこない」

 それだけは間違いようのない、本当の本音だった。

 扉が閉まる音がして、空気がさっと静まり返る。
 部屋の中にはスバルだけが取り残されて、寝台の上で丸くなる彼は視線をさまよわせる。

 ふと、寝台の端に引っ掛かり、床に落ちかけているローブが目に入った。
 手を伸ばし、それを手繰り寄せて抱え込む。まだ、そこにそれを抱いていた人の温もりが残っているような気がして、消えそうなそれを繋ぎ止めようとするかのようにスバルはそれを胸に抱きかかえて、



 ――そして、この日、ナツキ・スバルは初めて、異世界で本当にひとりきりになった。

11 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:26:51.38 ID:mYCRTCyj0.net
ほんまに臭いから死ね

12 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:26:57.65 ID:lRb70MFu0.net
狐はよ

13 :風吹けば名無し@\(^o^)/:2017/08/11(金) 13:27:13.73 ID:FeckDBUdp.net
これに関してはほんまにスバルのおかげなんだよなぁ

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