大和田「どうすりゃいいんだ…」

風吹けば名無し

本拠地、東京中央銀行で迎えた金融庁検査
先発曽根崎が大量失点、半沢も勢いを見せず惨敗だった
東京中央銀行に響く重役たちたちのため息、どこからか聞こえる「白水銀行に就職しておけば良かったな」という新入社員の声
無言で帰り始める重役達の中、元東京第一銀行出身の大和田は独り会議室で土下座していた。
常務就任で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる部下・・・
それを今の東京中央銀行で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」大和田は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、大和田ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい重役イスの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って半沢をうまく擁護する文句を考えなくちゃな」大和田は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、大和田はふと気付いた

「あれ・・・？部下どもがいる・・・？」
重役室から飛び出した大和田が目にしたのは、銀行を埋めつくさんばかりの大和田派の人々だった
千切れそうなほどに銀行の旗が振られ、地鳴りのようにが社歌が歌われていた。
どういうことか分からずに呆然とする大和田の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「大和田常務、会議です、早く行きましょう」声の方に振り返った大和田は目を疑った
「小木曽…お前出向したんじゃ」　「なんですか、大和田常務。居眠りでもしてたんですか？」
「浅野くん…キミ出向したんじゃ？」　「なんですか大和田常務、かってに浅野支店長を出向させないでください」
「岸川部くん…」　大和田は半分パニックになりながら組織図を見上げた
１番：小木曽　２番：浅野　３番：江島　４番：大和田　５番：中野渡　６番：内川　７番：半沢が「嫁に電話しろ」と言った時に失礼だろ！って言ってた重役の人　８番：伊佐山　９番：古里
暫時、唖然としていた新型コロナだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「出向・・・出向させられるんだ！」
中野渡から頭取職を受け取り、金融庁へ全力疾走する大和田、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ベンチで冷たくなっている大和田が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った