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水虫軌跡
- 1 :風吹けば名無し:2017/10/10(火) 03:41:37.33 ID:2ogtYMas0.net
- 水虫といえばたいがいオッサンの持病であり、それにかかると脂足に甚だしい異臭を放ち、その靴および靴下は、家族の間では汚物とみなされるという恐ろしい病気である。
そんな大変な病気に、私は16の夏、冒されてしまった。
どこでどううつったのか、そのルートは全く神秘のベールに包まれているのだが、最初は小さな水ぶくれだったので、「おや?毒虫に刺されたのかな」
と呑気に構えていた
- 2 :風吹けば名無し:2017/10/10(火) 03:42:21.52 ID:2ogtYMas0.net
- しかし、私が呑気にしている間も水虫菌は着実に足の裏の皮フを養分にして成長していたのである。
数日後、私はそれまでの人生で経験した事のない痒みに不安をつのらせながら、毎日足の裏を眺めていた。ムヒを塗ってもオロナインを塗っても、一向に良くなる気配がない。
- 3 :風吹けば名無し:2017/10/10(火) 03:42:40.04 ID:2ogtYMas0.net
- それどころか、痒いエリアは広がってゆくばかりで、よくよく見ると皮フの下に小さな水泡が多数結集している。
私は身震いすると同時に、「もしや水虫では……」という予感で恐怖のどん底に落ちていった。
- 4 :風吹けば名無し:2017/10/10(火) 03:43:17.75 ID:2ogtYMas0.net
- 一時間経っても二時間経っても、背中を丸めて足の裏ばかり熱心に眺めている娘がいたら、大抵の親は心配する。我が母も、さすがに心配になったらしく様子を見に来た。そして私の足をひと目見るなり、「アッ、あんたそれ水虫だよ、間違いない」とタイコ判を押した。
- 5 :風吹けば名無し:2017/10/10(火) 03:43:44.86 ID:2ogtYMas0.net
- 間違いであって欲しいと、すがるような思いで母を見上げた私に向かって、さらに「水虫って、もンのすごい治りにくいんだよ。あ−あ困ったね、どうする?」とつけ加えた。どうするもこうするも、私は泣くしがなかった。
- 6 :風吹けば名無し:2017/10/10(火) 03:43:59.41 ID:2ogtYMas0.net
- 私が水虫になったというウワサは、約一分で家族全員に知れわたった。”臭足のヒロジ”と異名をとる父は「オウ、水虫女、大変だなア」とニタニタしながらからかってきた。彼は自分の脂足よりも、もっと強力なキラワレ者が登場した事がうれしくて仕方ないのだ。
- 7 :風吹けば名無し:2017/10/10(火) 03:44:18.50 ID:2ogtYMas0.net
- 姉は急に冷酷極まりないナチの司令官の様な顔になり、トイレのスリッパは使うなとか、部屋を裸足で歩くなとか、数々のオキテを数十秒のうちにつくりあげ公布した。
- 8 :風吹けば名無し:2017/10/10(火) 03:44:56.52 ID:6JZ4bzyN0.net
- 桃の缶詰?
- 9 :風吹けば名無し:2017/10/10(火) 03:45:13.79 ID:2ogtYMas0.net
- あくる日から、私の水虫研究は始まった。野口英世並みの熱意で研究を行い、一日のうち七十。パーセント以上の時間を水虫に費やしていた。こうなると、苦悩だか生きがいだかわからなくなってくる。
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