東京+378

風吹けば名無し

本拠地、地球で迎えた人類戦
先発コロナが大量失点、変異型も勢いを見せず惨敗だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年は終息だな」の声
無言で帰り始めるウイルス達の中、昨年の首位打者新型コロナは独りベンチで泣いていた。
パンデミックで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今の地球で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」新型コロナは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、新型コロナははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って変異をしなくちゃな」新型コロナは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、新型コロナはふと気付いた

「あれ・・・？患者さんがいる・・・？」
ベンチから飛び出した新型コロナが目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりのコロナ患者だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように咳き込む音が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする新型コロナの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「コロナ、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った内川は目を疑った
「ま・・マーズさん？」「なんだコロナ、居眠りでもしてたのか？」
「サ・・・サーズコーチ？」「なんだコロナ、かってにサーズさんを引退させやがって」
「季節性コロナさん・・・」　新型コロナは半分パニックになりながらスコアボードを見上げた