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明け方の山月記部 🌖⛰🐅

1 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:32:50.16 ID:XQyOrAlU0.net
ほな

2 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:33:11.13 ID:XQyOrAlU0.net
山月記 中島敦

3 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:33:33.85 ID:XQyOrAlU0.net
 隴西の李徴は博學才穎、天寶の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃む所頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかつた。
いくばくもなく官を退いた後は、故山、虢略に歸臥し、人と交を絶つて、ひたすら詩作に耽つた。下吏となつて長く膝を俗惡な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺さうとしたのである。

4 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:33:57.68 ID:xY7sHLUA0.net
懐かしい

5 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:33:57.84 ID:XQyOrAlU0.net
しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を逐うて苦しくなる。李徴は漸く焦躁に驅られて來た。この頃から其の容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、眼光のみ徒らに烱々として、曾て進士に登第した頃の豐頬の美少年の俤は、何處に求めやうもない。

數年の後、貧窮に堪へず、妻子の衣食のために遂に節を屈して、再び東へ赴き、一地方官吏の職を奉ずることになつた。一方、之は、己の詩業に半ば絶望したためでもある。

6 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:34:02.32 ID:lQ5MQ2bB0.net
ふりがな振ってクレメンス

7 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:34:34.48 ID:XQyOrAlU0.net
曾ての同輩は既に遙か高位に進み、彼が昔、鈍物として齒牙にもかけなかつた其の連中の下命を拜さねばならぬことが、往年の秀才李徴の自尊心を如何に傷つけたかは、想像に難くない。

彼は怏々として樂しまず、狂悖の性は愈々抑へ難くなつた。

一年の後、公用で旅に出、汝水のほとりに宿つた時、遂に發狂した。

或夜半、急に顏色を變へて寢床から起上ると、何か譯の分らぬことを叫びつつ其の儘下にとび下りて、闇の中へ駈出した。
彼は二度と戻つて來なかつた。附近の山野を搜索しても、何の手掛りもない。その後李徴がどうなつたかを知る者は、誰もなかつた。

8 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:35:34.42 ID:XQyOrAlU0.net
 翌年、監察御史(かんさつぎょし)、陳郡(ちんぐん)の袁傪という者、勅命を奉じて嶺南(れいなん)に使いし、道に商於(しょうお)の地に宿った。

次の朝未だ暗い中に出発しようとしたところ、駅吏が言うことに、これから先の道に人喰い虎が出る故、旅人は白昼でなければ、通れない。今はまだ朝が早いから、今少し待たれたがよろしいでしょうと。

袁傪は、しかし、供廻りの多勢なのを恃み、駅吏の言葉を退けて、出発した。

9 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:36:12.65 ID:XQyOrAlU0.net
残月の光をたよりに林中の草地を通って行った時、果して一匹の猛虎が叢(くさむら)の中から躍り出た。虎は、あわや袁傪に躍りかかるかと見えたが、たちまち身をひるがえして、元の叢に隠れた。

叢の中から人間の声で「あぶないところだった」と繰り返し呟くのが聞えた。その声に袁傪は聞き憶えがあった。驚懼(きょうく)の中にも、彼はとっさに思いあたって、叫んだ。「その声は、我が友、李徴子ではないか?」

袁傪は李徴と同年に進士の第に登り、友人の少かった李徴にとっては、最も親しい友であった。温和な袁傪の性格が、峻峭(しゅんしょう)な李徴の性情と衝突しなかったためであろう。

10 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:36:28.09 ID:h90iQN8q0.net
これすこ

11 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:36:31.62 ID:XQyOrAlU0.net
 叢の中からは、しばらく返事がなかった。しのび泣きかと思われるかすかな声が時々漏れるばかりである。ややあって、低い声が答えた。「いかにも自分は隴西の李徴である」と。

12 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:37:00.21 ID:XQyOrAlU0.net
 袁傪は恐怖を忘れ、馬から下りて叢に近づき、懐かしげに久闊(きゅうかつ)を叙(じょ)した。そして、何故叢から出て来ないのかと問うた。

李徴の声が答えて言う。自分は今や異類の身となっている。どうして、おめおめと故人の前にあさましい姿をさらせようか。かつまた、自分が姿を現せば、必ず君に畏怖嫌厭(いふけんえん)の情を起こさせるに決っているからだ。

しかし、今、図らずも故人に会うことを得て、愧赧(きたん)の念をも忘れる程に懐かしい。どうか、ほんの暫くでいいから、我が醜悪な今の外形をいとわず、かつて君の友李徴であったこの自分と話を交してくれないだろうか。

13 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:37:21.02 ID:XQyOrAlU0.net
 後で考えれば不思議だったが、その時、袁傪は、この超自然の怪異を、実に素直に受け入れて、少しも怪もうとしなかった。彼は部下に命じて行列の進行を止め、自分は叢のかたわらに立って、見えざる声と対談した。

都の噂、旧友の消息、袁傪が現在の地位、それに対する李徴の祝辞。青年時代に親しかった者同志の、あのへだてのない語調で、それ等が語られた後、袁傪は、李徴がどうして今の身となるに至ったかを訊ねた。草中の声は次のように語った。

14 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:37:26.26 ID:1hULsrTl0.net
なぜ中島敦は現代の陰キャに刺さるのか

15 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:37:39.06 ID:N8+ijhmcM.net
中島敦自体が相当の秀才だったよな

16 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:38:00.77 ID:XQyOrAlU0.net
 今から一年程前、自分が旅に出て汝水(じょすい)のほとりに泊まった夜のこと、一睡してから、ふと眼を覚ますと、戸外で誰かが我が名を呼んでいる。声に応じて外へ出て見ると、声は闇の中からしきりに自分を招く。覚えず、自分は声を追うて走り出した。

無我夢中で駆けて行く中に、いつしか道は山林に入り、しかも、知らぬ間に自分は左右の手で地を掴んで走っていた。何か身体中に力が満ち満ちたような感じで、軽々と岩石を跳び越えて行った。

気が付くと、手先や肘のあたりに毛を生じているらしい。

少し明るくなってから、谷川に臨んで姿を映して見ると、既に虎となっていた。

17 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:38:40.58 ID:8BgjbEzGM.net
>>14
陰キャが重ねるには李徴ってランク上すぎるんやけどな

18 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:38:49.07 ID:XQyOrAlU0.net
自分は初め眼を信じなかった。次に、これは夢に違いないと考えた。夢の中で、これは夢だぞと知っているような夢を、自分はそれまでに見たことがあったから。どうしても夢でないと悟らねばならなかった時、自分は呆然とした。

そうして、恐れた。全く、どんな事でも起り得るのだと思うて、深く恐れた。

しかし、何故こんな事になったのだろう。分らぬ。全く何事も我々には判らぬ。理由も分らずに押付けられたものを大人しく受取って、理由も分らずに生きて行くのが、我々生きもののさだめだ。

19 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:39:15.71 ID:UZgxfJ8h0.net
何とかの羞恥心と何とかの老婆心やったっけ?

20 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:39:16.61 ID:+woRt4wT0.net
山月記って作者日本人なのか

21 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:39:45.28 ID:XQyOrAlU0.net
自分は直ぐに死を想うた。しかし、その時、眼の前を一匹の兎が駈け過ぎるのを見た途端に、自分の中の人間は忽ち姿を消した。
再び自分の中の人間が目を覚ました時、自分の口は兎の血に塗れ、あたりには兎の毛が散らばっていた。これが虎としての最初の経験であった。

それ以来今までにどんな所行をし続けて来たか、それは到底語るに忍びない。ただ、一日の中に必ず数時間は、人間の心が還って来る。
そういう時には、曾ての日と同じく、人語も操れれば、複雑な思考にも堪え得るし、経書の章句を誦んずることも出来る。

その人間の心で、虎としての己の残虐な行のあとを見、己の運命をふりかえる時が、最も情なく、恐しく、憤ろしい。

22 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:41:13.10 ID:y5FEaos80.net
山月記ってKが虎になる奴やっけ

23 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:41:37.36 ID:XQyOrAlU0.net
>>20
李徴っていう唐の時代の中国の小説を元に書かれた人虎伝っていう元の時代くらいに書かれた小説を元に昭和の日本人が書いたのが山月記

24 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:42:11.40 ID:XQyOrAlU0.net
しかし、その、人間にかえる数時間も、日を経るに従って次第に短くなって行く。今までは、どうして虎などになったかと怪しんでいたのに、この間ひょいと気が付いて見たら、己れはどうして以前、人間だったのかと考えていた。これは恐しいことだ。

今少し経てば、己れの中の人間の心は、獣としての習慣の中にすっかり埋れて消えて了うだろう。ちょうど、古い宮殿の礎が次第に土砂に埋没するように。
そうすれば、しまいに己れは自分の過去を忘れ果て、一匹の虎として狂い廻り、今日のように途で君と出会っても故人と認めることなく、君を裂き喰うて何の悔も感じないだろう。

25 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:42:25.04 ID:CP8AgY2a0.net
はよ

26 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:42:46.43 ID:XQyOrAlU0.net
一体、獣でも人間でも、もとは何か他のものだったんだろう。初めはそれを憶えているが、次第に忘れて了い、初めから今の形のものだったと思い込んでいるのではないか? いや、そんな事はどうでもいい。

己れの中の人間の心がすっかり消えて了えば、恐らく、その方が、己れはしあわせになれるだろう。
だのに、己れの中の人間は、その事を、この上なく恐しく感じているのだ。ああ、全く、どんなに、恐しく、哀しく、切なく思っているだろう! 己れが人間だった記憶のなくなることを。

この気持は誰にも分らない。誰にも分らない。己れと同じ身の上に成った者でなければ。ところで、そうだ。己れがすっかり人間でなくなって了う前に、一つ頼んで置きたいことがある。

27 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:43:08.33 ID:HPbhaImc0.net
すまん今日の夜中にもういっかいたててくれ

28 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:43:08.79 ID:XQyOrAlU0.net
 袁傪はじめ一行は、息をのんで、叢中の声の語る不思議に聞入っていた。声は続けて言う。

 他でもない。自分は元来詩人として名を成す積りでいた。しかも、業未だ成らざるに、この運命に立至った。曾て作るところの詩数百篇、固より、まだ世に行われておらぬ。遺稿の所在も最早判らなくなっていよう。

ところで、その中、今も尚記誦せるものが数十ある。これを我が為に伝録して戴きたいのだ。何も、これに仍って一人前の詩人面をしたいのではない。
作の巧拙は知らず、とにかく、産を破り心を狂わせてまで自分が生涯それに執着したところのものを、一部なりとも後代に伝えないでは、死んでも死に切れないのだ。

29 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:44:31.45 ID:XQyOrAlU0.net
 袁傪は部下に命じ、筆を執って叢中の声に随って書きとらせた。李徴の声は叢の中から朗々と響いた。
長短凡そ三十篇、格調高雅、意趣卓逸、一読して作者の才の非凡を思わせるものばかりである。しかし、袁傪は感嘆しながらも漠然と次のように感じていた。

成程、作者の素質が第一流に属するものであることは疑いない。しかし、このままでは、第一流の作品となるのには、何処か(非常に微妙な点に於て)欠けるところがあるのではないか、と。

30 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:44:47.96 ID:nHkUGZstd.net
実際虎になっている姿を見たものはいないし
そもそも虎になるなんて非現実的だ
虎を使役していたと考えるのが妥当だろう

31 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:44:52.89 ID:XQyOrAlU0.net
 旧詩を吐き終った李徴の声は、突然調子を変え、自らを嘲るか如くに言った。

 羞しいことだが、今でも、こんなあさましい身と成り果てた今でも、己れは、己れの詩集が長安風流人士の机の上に置かれている様を、夢に見ることがあるのだ。岩窟の中に横たわって見る夢にだよ。
嗤ってくれ。詩人に成りそこなって虎になった哀れな男を。(袁傪は昔の青年李徴の自嘲癖を思出しながら、哀しく聞いていた。)

そうだ。お笑い草ついでに、今の懐を即席の詩に述べて見ようか。この虎の中に、まだ、曾ての李徴が生きているしるしに。

 袁傪は又下吏に命じてこれを書きとらせた。その詩に言う。

偶因狂疾成殊類 災患相仍不可逃
今日爪牙誰敢敵 当時声跡共相高
我為異物蓬茅下 君已乗軺気勢豪
此夕渓山対明月 不成長嘯但成嘷

32 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:45:07.65 ID:lQ5MQ2bB0.net
>>22
なんか混じってんぞ

33 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:45:22.94 ID:XQyOrAlU0.net
>>27
朝方にしか立たんで夜やと落ちるし

34 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:45:30.77 ID:KWiy9FG2M.net
木浪のエラーに怒り狂う虎の話やっけ

35 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:45:44.18 ID:Y5eqbXAX0.net
そんなにええ話か?

36 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:45:50.30 ID:XQyOrAlU0.net
 時に、残月、光冷やかに、白露は地に滋く、樹間を渡る冷風は既に暁の近きを告げていた。人々は最早、事の奇異を忘れ、粛然として、この詩人の薄倖を嘆じた。李徴の声は再び続ける。

 何故こんな運命になったか判らぬと、先刻は言ったが、しかし、考えように依れば、思い当ることが全然ないでもない。

人間であった時、己れは努めて人との交を避けた。人々は己れを倨傲だ、尊大だといった。実は、それが殆ど羞恥心に近いものであることを、人々は知らなかった。

勿論、曾ての郷党の鬼才といわれた自分に、自尊心が無かったとは云わない。しかし、それは臆病な自尊心とでもいうべきものであった。

37 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:46:03.24 ID:ntmKecwv0.net
なぜか中島敦全集買っちゃいました
ちくま文庫の

38 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:46:11.99 ID:JwFf2C7Va.net
割と収まるもんやな短編とはいえ

39 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:46:44.40 ID:lQ5MQ2bB0.net
>>35
文章の美しさを味わうんやで

40 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:46:46.07 ID:XQyOrAlU0.net
己れは詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交って切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。
かといって、又、己れは俗物の間に伍することも潔しとしなかった。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為である。

己の珠に非ざることを惧れるが故に、敢て刻苦して磨こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出来なかった。

己れは次第に世と離れ、人と遠ざかり、憤悶と慙恚によって益々己の内なる臆病な自尊心を飼いふとらせる結果になった。
人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己れの場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。
これが己れを損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己れの外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ。

41 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:47:00.50 ID:JwFf2C7Va.net
李陵と名人伝やっけ?すこや

42 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:47:17.80 ID:igbJKWEMa.net
>>34
江越の三振にやぞ

43 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:47:42.88 ID:XQyOrAlU0.net
>>37
それ新字体やろ
中島敦はハードカバーの全集で旧字で読むと捗るぞ

44 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:48:09.67 ID:XQyOrAlU0.net
今思えば、全く、己れは、己れの有っていた僅かばかりの才能を空費して了った訳だ。
人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己れの凡てだったのだ。

己れよりも遥かに乏しい才能でありながら、それを専一に磨いたがために、堂々たる詩家となった者が幾らでもいるのだ。虎と成り果てた今、己れは漸くそれに気が付いた。それを思うと、己れは今も胸を灼かれるような悔を感じる。

45 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:48:17.21 ID:CP8AgY2a0.net
>>31
ここの漢詩むつかしくてきらい

46 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:48:24.16 ID:A45YlJcL0.net
尊大な自尊心を保つ為に他人を威嚇してる様が吼えて周りの動物をビビらせる虎と変わらない
だから虎になってしまったって解釈でええんか?

47 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:49:01.30 ID:XQyOrAlU0.net
己れには最早人間としての生活は出来ない。
たとえ、今、己れが頭の中で、どんな優れた詩を作ったにしたところで、どういう手段で発表できよう。
まして、己れの頭は日毎に虎に近づいて行く。どうすればいいのだ。己れの空費された過去は? 己れは堪らなくなる。

そういう時、己れは、向うの山の頂の巖に上り、空谷に向って吼える。この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。己れは昨夕も、彼処で月に向って咆えた。誰かにこの苦しみが分って貰えないかと。

しかし、獣どもは己れの声を聞いて、唯、懼れ、ひれ伏すばかり。山も樹も月も露も、一匹の虎が怒り狂って、哮っているとしか考えない。天に躍り地に伏して嘆いても、誰一人己れの気持を分ってくれる者はない。
ちょうど、人間だった頃、己れの傷つき易い内心を誰も理解してくれなかったように。己れの毛皮の濡れたのは、夜露のためばかりではない。

48 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:49:13.13 ID:l7sJWNaN0.net
こいついつも立ててんな

49 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:49:18.50 ID:/kHdHWMhM.net
文学って好きなんなけど読むきっかけが無いのよね
教科書みたいにタダで読めたのありがたかったな当たりしかないし

50 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:49:23.08 ID:u59lBC3E0.net
このスレすこ

51 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:49:31.11 ID:CP8AgY2a0.net


52 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:49:52.26 ID:XQyOrAlU0.net
 漸く四辺(あたり)の暗さが薄らいで来た。木の間を伝って、何処からか、暁角が哀しげに響き始めた。

 最早、別れを告げねばならぬ。酔わねばならぬ時が、(虎に還らねばならぬ時が)近づいたから、と、李徴の声が言った。だが、お別れする前にもう一つ頼みがある。それは我が妻子のことだ。

彼等は未だ虢略にいる。固より、己れの運命に就いては知る筈がない。君が南から帰ったら、己れは既に死んだと彼等に告げて貰えないだろうか。決して今日のことだけは明かさないで欲しい。
厚かましいお願だが、彼等の孤弱を憐れんで、今後とも道塗に飢凍することのないように計らって戴けるならば、自分にとって、恩倖、これに過ぎたるは莫い。

53 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:50:25.30 ID:XQyOrAlU0.net
 言終って、叢中から慟哭の声が聞えた。袁傪もまた涙を泛べ、欣んで李徴の意に副いたい旨を答えた。李徴の声はしかし忽ち又先刻の自嘲的な調子に戻って、言った。

 本当は、先ず、この事の方を先にお願いすべきだったのだ、己れが人間だったなら。飢え凍えようとする妻子のことよりも、己の乏しい詩業の方を気にかけているような男だから、こんな獣に身を堕すのだ。

54 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:50:53.80 ID:XQyOrAlU0.net
 言終って、叢中から慟哭の声が聞えた。袁傪もまた涙を泛べ、欣んで李徴の意に副いたい旨を答えた。李徴の声はしかし忽ち又先刻の自嘲的な調子に戻って、言った。

 本当は、先ず、この事の方を先にお願いすべきだったのだ、己れが人間だったなら。飢え凍えようとする妻子のことよりも、己の乏しい詩業の方を気にかけているような男だから、こんな獣に身を堕すのだ。

55 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:50:59.97 ID:XQyOrAlU0.net
ミスったわ

56 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:51:18.01 ID:XQyOrAlU0.net
 そうして、附加えて言うことに、袁傪が嶺南からの帰途には決してこの途を通らないで欲しい、その時には自分が酔っていて故人を認めずに襲いかかるかも知れないから。

又、今別れてから、前方百歩の所にある、あの丘に上ったら、此方を振りかえって見て貰いたい。自分は今の姿をもう一度お目に掛けよう。
勇に誇ろうとしてではない。我が醜悪な姿を示して、以て、再び此処を過ぎて自分に会おうとの気持を君に起させない為であると。

57 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:51:33.55 ID:XQyOrAlU0.net
 袁傪は叢に向って、懇ろに別れの言葉を述べ、馬に上った。叢の中からは、又、堪え得ざるが如き悲泣の声が洩れた。袁傪も幾度か叢を振返りながら、涙の中に出発した。

58 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:51:44.34 ID:y9C/Mw9q0.net
>>49
青空文庫アプリ入れとけ
捗るぞ

59 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:51:44.90 ID:1hULsrTl0.net
我が西遊記すこ

60 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:51:45.99 ID:XQyOrAlU0.net
 一行が丘の上についた時、彼等は、言われた通りに振返って、先程の林間の草地を眺めた。忽ち、一匹の虎が草の茂みから道の上に躍り出たのを彼等は見た。虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと、又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。

61 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:52:06.49 ID:XQyOrAlU0.net
(昭和17年2月発表)

62 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:52:40.94 ID:u59lBC3E0.net
ナポレオンすこ

63 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:52:59.30 ID:JwFf2C7Va.net
その後南の島へ

64 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:53:03.75 ID:XQyOrAlU0.net
>>49
夏目漱石 芥川龍之介 中島敦 志賀直哉はハズレがないからええぞ

65 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:54:06.86 ID:igbJKWEMa.net
袁傪の部下はこれ見てどう思ったんやろ
こいついきなりなんか訳のわからんことし始めてるよとか思ったんやろか

66 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:54:13.22 ID:N8+ijhmcM.net
小説なのに説教臭い話やな

67 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:54:23.01 ID:/kHdHWMhM.net
>>58
これは捗るわサンキューガッツ

68 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:54:50.92 ID:9ganGWIC0.net
こんな話やったか
ええな

69 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:54:59.32 ID:/kHdHWMhM.net
>>64
やっぱ教科書に載るだけはあるわ

70 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:55:20.45 ID:1hULsrTl0.net
わいもうすぐ中島敦死んだ年やん!
寿命中島敦に分けてやりたいわ

71 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:55:28.17 ID:XQyOrAlU0.net
>>66
説教やないぞ
李徴の悲しみを聞くんや

72 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:55:41.38 ID:XQyOrAlU0.net
牛人 中島敦

73 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:56:35.64 ID:XQyOrAlU0.net
 魯の叔孫豹(しゅくそんひょう)がまだ若かった頃、乱を避けて一時斉に奔ったことがある。途に魯の北境庚宗の地で一美婦を見た。俄に懇ろとなり、一夜を共に過して、さて翌朝別れて斉に入った。

斉に落着き大夫国氏の娘を娶って二児を挙げるに及んで、かつての路傍一夜の契りなどはすっかり忘れ果ててしまった。

74 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:57:37.94 ID:XQyOrAlU0.net
 或夜、夢を見た。四辺(あたり)の空気が重苦しく立罩め不吉な予感が静かな部屋の中を領している。突然、音も無く室の天井が下降し始める。極めて徐々に、しかし極めて確実に、それは少しずつ降りてくる。

一刻ごとに部屋の空気が濃く淀み、呼吸が困難になってくる。逃げようともがくのだが、身体は寝床の上に仰向いたままどうしても動けない。見えるはずはないのに、天井の上を真黒な天が盤石の重さで押しつけているのが、はっきり判る。
いよいよ天井が近づき、堪え難い重みが胸を圧した時、ふと横を見ると、一人の男が立っている。恐ろしく色の黒い傴僂で、眼が深く凹くぼみ、獣のように突出た口をしている。全体が、真黒な牛に良く似た感じである。

75 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:58:00.39 ID:lQ5MQ2bB0.net
>>72
ワイのリクエストやん
サンキューやで

76 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 04:58:54.36 ID:XQyOrAlU0.net
牛! 余われを助けよ、と思わず救を求めると、その黒い男が手を差伸べて、上からのし掛かる無限の重みを支えてくれる。それからもう一方の手で胸の上を軽く撫でてくれると、急に今までの圧迫感が失くなってしまった。ああ、良かった、と思わず口に出したとき、目が醒めた。

 翌朝、従者下僕らを集めて一々検べて見たが、夢の中の牛男(うしおとこ)に似た者は誰もいない。その後も斉の都に出入する人々について、それとなく気を付けて見るが、それらしい人相の男には絶えて出会わない。

 数年後、再び故国に政変が起り、叔孫豹は家族を斉に残して急遽帰国した。後、大夫として魯の朝(ちょう)に立つに及んで、初めて妻子を呼ぼうとしたが、妻は既に斉の大夫某と通じていて、一向夫の許に来ようとはしない。
結局、二子孟丙(もうへい)・仲壬(ちゅうじん)だけが父の所へ来た。

77 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:00:09.33 ID:XQyOrAlU0.net
 或朝、一人の女が雉を手土産に訪ねて来た。始め叔孫の方ではすっかり見忘れていたが、話して行く中にすぐ判った。十数年前斉へ逃れる道すがら庚宗の地で契った女である。

独りかと尋ねると、倅(せがれ)を連れて来ているという。しかも、あの時の叔孫の子だというのだ。とにかく、前に連れてこさせると、叔孫はアッと声に出した。色の黒い・目の凹んだ・傴僂なのだ。夢の中で己を助けた黒い牛男にそっくりである。
思わず口の中で「牛!」と言ってしまった。するとその黒い少年が驚いた顔をして返辞をする。叔孫は一層驚いて、少年の名を問えば、「牛と申します」と答えた。

 母子ともに即刻引取られ、少年は豎じゅ(小姓)の一人に加えられた。それ故、長じて後もこの牛に似た男は豎牛(じゅぎゅう)と呼ばれるのである。

容貌に似合わず小才の利く男で、すこぶる役には立つが、いつも陰鬱な顔をして少年仲間の戯れにも加わらぬ。主人以外の者には笑顔一つ見せない。叔孫にはひどく可愛がられ、長じては叔孫家の家政一切の切廻しをするようになった。

78 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:00:20.02 ID:N8+ijhmcM.net
>>71
ええ話やと思うけど中島敦本人の自己投影と願望がくどいくらいでとるわ

79 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:00:25.24 ID:Bew4JO+W0.net
李徴ほど優秀ではないし不条理も受けてないけどあいつの悲しみはめちゃくちゃ共感できる

80 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:01:33.40 ID:XQyOrAlU0.net
 眼の凹んだ・口の突出た・黒い顔は、ごく偶に笑うとひどく滑稽な愛嬌に富んだものに見える。こんな剽軽(ひょうきん)な顔付の男に悪企わみなど出来そうもないという印象を与える。目上の者に見せるのはこの顔だ。

仏頂面をして考え込む時の顔は、ちょっと人間離れのした怪奇な残忍さを呈する。儕輩(さいはい)の誰彼が恐れるのはこの顔だ。意識しないでも自然にこの二つの顔の使い分けが出来るらしい。

 叔孫豹の信任は無限であったが、後嗣に直そうとは思っていない。秘事ないし執事としては無類と考えていたが、魯の名家の当主とは、その人品からしてもちょっと考えにくいのである。

豎牛ももちろんそれは心得ている。叔孫の息子たち、殊に斉から迎えられた孟丙・仲壬の二人に向かっては、常に慇懃を極めた態度をとっている。彼らの方では、幾分の不気味さと多分の軽蔑とをこの男に感じているだけだ。
父の寵の厚いのに大して嫉妬を覚えないのは、人柄の相違というものに自信をもっているからであろう。

81 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:02:12.54 ID:XQyOrAlU0.net
>>78
中島敦の作品を読んでいるときは中島敦のことなんて忘れて読んだ方がええぞ

82 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:02:13.64 ID:8Km9dKPI0.net
初見で読めない字があると悔しいしワイは学がないんやなって

83 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:03:08.07 ID:XQyOrAlU0.net
 魯の襄公が死んで若い昭公の代となる頃から、叔孫の健康が衰え始めた。丘蕕(きゅうゆう)という所へ狩りに行った帰りに悪寒を覚えて寝付いてからは、ようやく足腰が立たなくなって来る。

病中の身の廻りの世話から、病床よりの命令の伝達に至るまで、一切は豎牛一人に任せられることになった。

豎牛の孟丙らに対する態度は、しかし、いよいよ遜ってくる一方である。

84 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:03:50.30 ID:fSRswu3j0.net
日本で言うと司法試験落ちて発狂みたいなもん?

85 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:04:38.76 ID:/kHdHWMhM.net
難しい話だ

86 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:05:42.89 ID:XQyOrAlU0.net
 叔孫が寝付く以前に、長子の孟丙のために鐘を鋳させることに決め、その時に言った。
お前はまだこの国の諸大夫と近附になっていないから、この鐘が出来上ったら、その祝を兼ねて諸大夫を饗応するが宜よかろうと。明らかに孟丙を相続者と決めての話である。

叔孫が病に伏してから、ようやく鐘が出来上った。孟丙は、かねて話のあった宴会の日取の都合を父に聞こうとして、豎牛にその旨を通じてもらった。特別の事情が無い限り、豎牛の外は誰一人病室に出入出来なかったのである。

豎牛は、孟丙の頼を受けて病室に入ったが、叔孫には何も取次がない。すぐ外へ出て来て孟丙に向かい、主君の言葉として出鱈目な日にちを指定する。

指定された日に孟丙は賓客を招き盛んに饗応して、その座で始めて新しい鐘を打った。病室でその音を聞いた叔孫が怪しんで、あれは何だと聞く。孟丙の家で鐘の完成を祝う宴が催され多数の客が来ている旨を、豎牛が答える。

俺の許も得ないで勝手に相続人面づらをするとは何事だ、と病人が顔色を変える。それに、客の中には斉にいる孟丙殿の母上の関係の方々も遥々見えているようです、と豎牛が附加える。
不義を働いたかつての妻の話を持出すといつも叔孫の機嫌が見る見る悪くなることを、良く承知しているのだ。

病人は怒って立上がろうとするが、豎牛に抱きとめられる。身体に障ってはいけないというのである。
俺がこの病でてっきり死ぬものと決めて掛かって、もう勝手な真似を始めたのだなと歯咬みをしながら、叔孫は豎牛に命ずる。構わぬ。引捕らえて牢に入れろ。抵抗するようなら打殺しても宜い。

 宴が終り、若い叔孫家の後嗣は快く諸賓客を送り出したが、翌朝は既に屍体したいとなって家の裏藪に棄てられていた。

87 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:06:37.68 ID:1V9IcKuIa.net
>>1
飽きもせず何度も同じスレ立ててんじゃねーぞ豚

88 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:07:13.04 ID:8Km9dKPI0.net
ええ…

89 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:07:24.95 ID:l27HW/Cy0.net
>>84
国家試験総合職受けて落ちたかんじ

90 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:07:38.97 ID:XQyOrAlU0.net
>>84
東大一発合格からの財務官僚に成績上位で一発合格したけど自分より頭悪い上司に頭下げるのが嫌ですぐ辞表出して小説家目指したけど作品を投稿することもしないままに挫折して復職してクソ上司と元同期の先輩に頭下げてるうちに発狂

91 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:07:58.39 ID:N8+ijhmcM.net
中島敦の小説はすごい丁寧ですごい読みやすいけど逆に読者を馬鹿にしてんじゃないかって気がするわ

92 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:08:30.56 ID:JwFf2C7Va.net
牛人はじめて読むわ引き込まれる

93 :風吹けば名無し:2019/06/23(日) 05:09:38.20 ID:XQyOrAlU0.net
 孟丙の弟仲壬は昭公の近侍某と親しくしていたが、一日友を公宮に訪ねた時、たまたま公の目に留とまった。二言三言、その下問に答えている中に、気に入られたと見え、帰りには親しく玉環を賜わった。

大人しい青年で、親にも告げずに身に佩おびては悪かろうと、豎牛を通じて病父にその名誉の事情を告げ玉環を見せようとした。牛は玉環を受取って内に入ったが、叔孫には示さない。仲壬が来たということさえ話さぬ。

再び外に出て来て言った。父上には大変御喜びですぐにも身に着けるようにとのことでした、と。仲壬はそこで始めてそれを身に佩びた。

数日後、豎牛が叔孫に勧める。既に孟丙が亡い以上、仲壬を後嗣に立てることは決まっている故、今から主君昭公に御目通りさせては如何。

叔孫がいう。いや、まだそれと決めた訳ではないから、今からそんな必要はない。

しかし、と牛が言葉を返す。父上の思召しはどうあろうと、息子の方では勝手にそう決め込んで、もはや直接君公に御目通りしていますよ。

そんな莫迦な事があるはずは無いという叔孫に、それでも近頃仲壬が君公から拝領したという玉環を佩びていることは確かですと牛が請け合う。

早速仲壬が呼ばれる。果たして玉環を佩びている。公からの戴きものだという。父は利かぬ身体を床の上に起こして怒った。息子の弁解は何一つ聞かれず、すぐにその場を退いて謹慎せよという。

 その夜、仲壬はひそかに斉に奔った。

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