オウムの弁当屋さんが近所で開店する

風吹けば名無し

『未解決事件　オウム真理教秘録』　NHKスペシャル取材班　1991年1月、麻原はこの弁当屋を訪問し、説法を行っていた。

麻原「一般のひとは自分が生きるために仕事をしているわけだから、これは供養とは言わないよね。
その働いたものを、布施したときに供養が成立するよね。
でも君たちは一生懸命ワークするだけで供養になるんじゃないか。どうだ」

弁当屋の信者全員「はい（返事は鈍く、声は小さい）」

麻原「どんな努力をすればいいんだ？え？
そして新しく入ってくる人たちに、君たちは弁当屋の意義を説かなければならない。
素晴らしいんだ、これは、と、ね。自分たちがオウムの経済の一翼を担っているんだと。
そして自分たちはタントラヴァジラヤーナの修行を実践してるんだと。
これがね、帰依の修行であると。これが供養の修行であると。そしてこれが懺悔の修行であると。どうだ。
君たちのなかには、『俺はなんでこんなエビをむいてるんだろう』『俺はなんでこんなバイクに乗らなきゃならないんだろう』と。
ねぇ。ああいやだなぁ。『はい。オウムの弁当屋です』（やる気のなさそうな信者のまねをする麻原。みんな笑う）ね。
『俺は修行するために、なんでこんなことをやってるんだ』と。
しかし菩薩はね。真理の目を持つものがね、今君たちのワークでいったら、すでにこの3つのね、タントラヤーナの3つの条件が存在していることを見抜くわけだね。
じっと耐えて歩き続けた人というのは、そこで2つ3つと山があるかもしれないけど、その山を越えて、本当の意味での真理の中に入る。
そして大師、クンダリニーヨーガの大師、あるいはマハームドラーの大師として、あるいはマハーヤーナ、大乗の大師としてね。
活躍し、来世は本当に救済者として生まれ変わることができるよね。
積極的に1日、0.1%でも、0.01%でも、多くの功徳を積むぞと。
そして1年後、2年後、3年後にはね。本当にね。ああ、オウムの経済はあの人たちの時代に、オウムのお弁当屋さんが築き上げたんだと。
言われるようになって欲しいね、私は。どうだ？全力でやってくれるか！」

弁当屋の信者全員「はい！」

この説法で注目したのは、弁当屋の信者たちの「はい」という返事だ。
弁当屋の信者たちは、最初、返事は鈍く、声も小さかった。麻原を目の前にしながら、信者がこのような反応を示すのは異例だ。
これは、ワークだけでなく、修行に対するモチベーションが低いことを示していると思われる。
麻原は、そんな弁当屋の信者に対し、弁当屋のワークがいかにオウム真理教にとって重要かを述べた上で、さらに、自分たちの修行にとっていかに有益か説明した。
一見、修行に関係のない弁当屋の仕事を、信者にとって利益があるように説得し、動機を与えていく麻原の巧妙な話術。
この能力こそが、多くの信者を惹きつけて教団を拡大し、そして無差別テロへと信者を導いていった原動力となっていたのだ。