【朗報】中出しした相手の能力をコピーする女子高生が主役の異世界転生ラノベが書籍化

風吹けば名無し

「小山」

　などと口をへの字にしてテーブルを拭いていると、名字で呼ばれた。
　基本、出身地を名乗る以外に平民に名字のないこの世界で、あたしの名字を知るのは1人しかいない。
　千葉セイジ。
　こっちの世界に一緒に飛ばされてきた、かつての同級生だ。

「千葉、あたしは店じゃハルだってば。ちゃんと呼んでよ」
「あ、うん。ハ、ハル……ね。そう呼んで欲しいんなら、なるべくそうする」
「どうする？　カウンターでいい？」
「あー、うん。いつもの席で」
「どこだっけ？」
「そ、そこの隅っこ」
「はい、１名様ごあんな～い」

　千葉は相変わらずキョドった態度で変な笑みを浮かべてる。
　職業『冒険者』とかいう、この街にはありふれたモンスター退治とか探索とかで生活している千葉は、会うたびに顔つきはちょっとずつ男っぽくなっていくけど、陰キャなところはなかなか抜けない。
　はっきり言ってキモい。
　同中だった人の話では厨二病で有名だった時期もあったとかで、なんか相当痛かったらしい。最近、こっちで染めた赤い髪をカチカチに固めてるんだけど、それが本当に似合ってないっていうか、カープの帽子にしか見えなくてつらい。
赤い胸当てや肩当てみたいのまでしてるんだけど、それも普通に人体模型にしか見えなかった。
　オタク基準のカッコ良さみたいのが多分あるんだろう。でもちょっと理解できないっていうか、自分のニキビ面をわかってない感じがする。どうせなら分厚い仮面でまずその冴えない顔を隠すべきだ。
　あたしはこっちの世界に来るまで、コイツとは絡んだことも１回もなかった。ぶっちゃけ教室の空気の一部だった。